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  僕と誰かの間には何かが在る。
 見えない。触れない。聞けない。嗅げない。味も無ければ味気も無い。
 つまり先が無ければ、後も無い。それは果てが無いのと同義だ。
 無い無いだらけで切りが無い。
 結局最後に在った(のこった)のは事実だけだった。
 それだけで満足すれば良いのだが、上で見ていた傍観者諸賢が言った。

「無残に霧散し漂い広がり存在があやふやだ、有耶無耶なままではつまらない」

 そう言って歪な小瓶に似た名前を付けた。
 不透明なそれの名は『不公平』と言う名前らしい。

「名前を付けたそれは随分な鏡面です。大変愉快ですが皆さんの見分けが付きません」

 聖人君子と言う名の欠陥人が神の名の下に、薄っぺらい笑顔を浮かべながら『不公平』の様々な場所に色を塗っていく。



 そうして最初に塗られたのが――肌の色だったのです。





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